世界保健機関 (WHO) によれば、交通事故によって毎年130万人が死亡しています。死亡事故の約8%は、不注意運転によって引き起こされています。不注意運転の原因は視覚的なものや操作ミスから認知障害まで多岐にわたりますが、最も多いのが、携帯電話の通話やメッセージの作成です。
こうした悲惨な交通事故に加え、平均して10日に1人の子供が車内での熱中症が原因で亡くなっています。この種の死亡事故の半数以上は、保護者が子供を車内に置き去りにしたことが原因で発生しています。車内の温度はわずか10分間で最大19度も上昇することがあります。
自動車や道路はテクノロジの産物であり、私たちの生活に計り知れないほどの利便性とモビリティをもたらします。一方で、交通事故の死傷者をなくす取り組みであるビジョン・ゼロの目標を達成するには、自動車や道路の安全性を向上させる高度なテクノロジが必要です。
NXPのi.MXアプリケーション・プロセッサ・シリーズには、ドライバーや乗員の監視システムなどのアプリケーションに対応した製品が含まれ、交通事故の減少、不注意運転の回避、運転ミスの防止を実現します。NXPの最終的な目標は、道路交通事故の防止を支援し、ドライバーと同乗者の保護、さらに歩行者や自転車といった交通弱者の保護を促進することです。
i.MX 93アプリケーション・プロセッサ評価キット
i.MX 93ファミリ:NXPの次世代i.MX 9シリーズの第1弾
i.MX 93ファミリは、NXPの次世代i.MX 9 シリーズ・アプリケーション・プロセッサの最初の製品です。i.MX 93シリーズは、車載規格AEC-Q100(グレード3)の認証を取得し、2024年半ばには生産が開始される予定です。i.MX 93 SoCは、最大2個のArm® Cortex ®-A55コア、1個のArm Cortex-M33コア、1個のArm® Ethos™ U65ニューラル・プロセッシング・ユニット (NPU) を搭載しています。i.MX 93プロセッサとNXPの高集積PCA9452パワーマネジメントIC (PMIC) およびAW611 Wi-Fi® モジュールを組み合わせることで、車載アプリケーションにおけるコネクティビティとパワーマネージメントの両方のニーズに対応できます。
内蔵のヘテロジニアス・コアとArm® Ethos®-U65 NPUが平行して動作するi.MX 93プロセッサは、ドライバーや車内を監視するシステムなどの幅広いAI ベース計算集約型車載アプリケーションに対応し、ドライバーの識別、疲労検知、よそ見検知、危険運転検知、音声認識、自然言語処理などを実現します。このNPUによって、このようなシナリオにおけるi.MX 93の処理能力が10倍以上に高まります。専用NPUのハードウェア機能とNXPのeIQ®機械学習ソフトウェア開発環境により、包括的なシステム・レベルのAIアプリケーションを容易に開発できます。このようなAIによるオブジェクト認識は、自動車から貴重なデータを収集してクラウドに送信し、さまざまなアプリケーション向けの処理を実行するために役立ちます。
早期アクセスのお客様を対象に、i.MX 93ファミリの14 x 14 mm車載パッケージの量産開始前サンプルと評価キットを提供しています。詳しくはこちらをご覧ください。
i.MX 93プロセッサは、複数のギガビット・イーサネット・インターフェースを同時に運用できるため、コストを最適化したゲートウェイにおける車載アプリケーションに最適の選択肢です。車載ゲートウェイを使用して、次のタスクを実行できます。
- リアルタイムでの車両情報の受信
- 最寄りの充電ステーションや公共駐車場の検索
- 効率性と柔軟性に優れたOTA (Over-The-Air) により、自動車メーカーやレンタル会社からのアップデートやアラートを提供
- リモートでの車両のロックとロック解除
- 盗難車の追跡と回収、車載カメラ映像のストリーミング、盗難や事故の記録、助けを求める緊急通報の処理
i.MX 93 SoCは、高性能で電力効率に優れたコア、高度に統合され最適化されたBOM、豊富な機能を備えたヒューマン・マシン・インターフェース (HMI)、コネクティビティ・オプションを備えており、コスト効率の高い汎用コンピューティング ・アプリケーションに適しています。このような主要機能の一部は既存のアーキテクチャのアドオンとして最適であり、NXPのMCUと組み合わせて幅広い車載ユースケースに対応することができます。
NXPは、機能安全を特に自動車市場におけるコア・コンピテンシと位置付けて重要視しています。その意味で、i.MX 93アプリケーション・プロセッサはQuality Management (QM) デバイスであり、追加のハードウェアを使用するASIL-Bソリューションをサポートする機能を備えています。i.MX 95ファミリなど、i.MX 9シリーズにおける後続製品もASIL-Bに準拠する予定です。
i.MX 93のアプリケーション開発の包括的イネーブルメント
i.MX 93プロセッサは、組込みLinux®、FreeRTOS、GHS、QNX、AUTOSARの各オペレーティングシステム (OS) を完全にサポートしています。最適化されたOSとシステム検証済みのボード・サポート・パッケージ (BSP) には、お客様のアプリケーションを迅速にテストしてその性能を最大限に引き出すためのツールが含まれます。テスト済み、認証済みのi.MX 93xx Linux BSPはi.MX 93xx SoC上のLinux OSをサポートしており、i.MX 93プロセッサ・ハードウェア向けの標準オープンソースLinuxカーネルとのインターフェースとして無償で使用できます。
また、Green HillsやQNXなどのパートナーも、i.MX 93 SoC向けに、安全性が認証されたRTOS、仮想化サービス、C/C++開発ツールなど、安全でセキュアな基盤ソフトウェアをベースとした生産重視のイネーブルメントを提供しています。自動車メーカーやTier 1サプライヤは、i.MX 93プロセッサのAI機能と拡張パフォーマンス機能、さらにGreen HillsおよびQNXのソフトウェアを使用することで、量産車両のプログラムにおける競争優位性を獲得できます。
高集積のi.MX 93 SoCは、内蔵の機械学習アクセラレータと高性能コアに加え、Green HillsやQNXの安全でセキュアなRTOSソフトウェアとツールによって提供される機能を使用することで、数多くの新しいユース・ケースに対応できます。オプションの仮想化を使用すると、リアルタイム性が重視されるアプリケーションをLinuxと平行して安全に実行しながら、開発生産性の大幅な改善と生産期間の短縮化を実現できます。現在、早期アクセスのお客様向けに、i.MX 93ベース評価ボード向けのGreen HillsとQNXの暫定製品版を提供しています。正式な製品版は来年提供される予定です。
NXPはAUTOSAR規格のプレミアム・パートナーとして、お客様が開発を迅速に進められるよう、プロフェッショナル・サービス・チームからi.MX 93 SoC用の量産向けマイクロコントローラ抽象化レイヤ (MCAL) およびOSソフトウェアを提供する予定です。
次世代の自動車設計でi.MX 93プロセッサをテスト・ドライブ
i.MX 93アプリケーション・プロセッサの車載グレード向け量産開始前サンプルをご用意しています。また、お客様の車載ソリューション開発に役立つ専用評価キットに加え、使いやすい開発ツールや包括的なパートナー・エコシステムも利用できます。i.MX 93車載グレード・プロセッサは、2024年半ばには通常販売される予定です。早期アクセス・サンプルをお求めのお客様は、Beta.iMX@nxp.comまでお問い合わせください。