先週のWireless Wednesdayブログで予告したように、今週はMatter 1.4の詳細について詳しくご紹介します。
11月7日にCSAから発表があり、Matter 1.4がリリースされました。電力管理機器の新たな種類と機能、ホーム・ネットワーク・インフラ、拡張マルチ管理者など、いくつかの重要な分野でのサポートが追加されました。NXPは業界のさまざまな企業に協力し、Matter対応製品のポートフォリオの構築と立ち上げを支援しています。開発段階と展開段階でサポートを行うほか、各企業のアプリケーション要件とユース・ケースをMatter標準の開発に取り入れています。
NXPはMatter 1.4を歓迎し、これによって導入または強化される各主要分野への取り組みを進めます。そして、多くのパートナー様やお客様と協力して、このような機能を実現して導入を進めることで、Matterが自律型スマートホームにもたらす基盤をさらに強化します。Matterが進化し続ける中で、Matter 1.4まででサポートされた機能とデバイス・タイプの進化と、Matter 1.5で計画されている改善と拡張が、Matterの普及促進に非常に大きな影響をもたらすと考えられます。このことは、エンド・ユーザーに対して、従来得られなかった価値と利益を作り出すことになるでしょう。NXPに特に重点的に取り組んでいる分野は、主に次の3つです。
電力管理
NXPは、スマートホームが真の自律性を獲得するためには、電力インテリジェンスとオーケストレーションが欠かせないと考えています。Matter 1.4では、電力供給デバイスと重要性の高い負荷が連携して動作するために欠かせない重要な要素の多くを利用できるようになりました。このような要素はデバイス・レベルの電力管理の制御と報告を担い、ローカル・レベル(デバイス間)でデバイスが動作するための基盤となるため、複雑性をもたらすクラウドへの依存が解消されます。NXPは将来のバージョンのMatterでも、パートナーと協力してこの基盤を拡張し、電力会社からの給電とその他の電源を連携して利用できるように電力デバイスの種類を増やし、機能を増強していきます。
NXP製品による住宅および他のマイクログリッドのエネルギー管理
宅内ネットワーク・インフラストラクチャ
消費者が要望やニーズに合わせたMatterベース・スマートホームを簡単に構築できるようにするには、住宅に適切なインフラを導入する必要があります。Matter 1.4では、ホーム・ルータとアクセス・ポイント (HRAP) のサポート認定が追加されています。これを新しいHRAPデバイスの設計に取り入れたり、現在住宅に設置されているHRAPデバイスにアップグレードで追加したりできます。これにより、Matterに必要なシームレス・コネクティビティを実現する手段が増えます。
拡張マルチ管理者
価値ある要素であるMatterによって、消費者はスマートホームを構築する際の選択肢が広がり、柔軟性が増えるため、特定のエコシステムやブランドに縛られることなく、能力と経験に基づいて購入する製品を決定できるようになります。Matter 1.4で導入され、Matter 1.5で拡張と強化が予定されている拡張マルチ管理者機能によって、このエクスペリエンスがさらに簡単になり、エンド・ユーザーの利便性が大きく高まります。
Matter 1.4の新機能:
電力管理デバイスの種類と機能
Parks Associatesが最近実施した調査によると、宅内電力管理は消費者にとってスマートホーム・デバイスの導入を決める主な理由の1つになってきています*。消費者は自宅にある各デバイスや家電製品が消費している電力量を知りたいだけでなく、手動で調整しなくても電力を節約し、電気料金を減らしてくれるルーチン機能と自動化を求めています。Matter 1.4で導入される新しいデバイス・タイプと新機能によって、この未来が実現します。Matter 1.3のアップデートでは電力報告機能が導入され、大型家電や電気自動車充電設備の電力管理用途に対応できるようになりました。Matter 1.4ではこの電力管理機能が拡張され、ソーラー・パネル、バッテリ、ヒート・ポンプ、給湯器などの新しいデバイス・タイプのサポートが追加されます。このデバイス・タイプの追加に加え、電力管理とサーモスタット・クラスタが改善されるため、住宅の電力管理のスマート化と自動化をさらに促進できるようになります。
- 新しいデバイス・タイプ:ソーラー・パネル、バッテリ、ヒート・ポンプ、給湯器
- 拡張されるデバイス・タイプ:EVSE、サーモスタット
- 機能: デバイスの電力管理とモード
(出典:Connectivity Standards Allianceの声明)
NXPは、Matterデバイスを構築するための幅広いソリューションを提供しています。詳細については、nxp.com/matterをご覧ください。
ホーム・ルータとアクセス・ポイント (HRAP) を使用したネットワーク・インフラ
ホーム・ルータやモデム、アクセス・ポイント、セットトップボックスなどのデバイスを設計またはアップグレードして、Matterベースのスマートホームをさらにしっかりとサポートできるようになります。Matter認証を取得したHRAPデバイス、つまりWi-Fiアクセス・ポイントとThreadボーダ・ルータの両方を組み合わせることで、スマートホームの基盤となるインフラを構築でき、いずれかのテクノロジを使用するMatter製品のユビキタス・デバイスに欠かせないインフラが得られます。HRAPデバイスは、Threadネットワークのクレデンシャルを保存、共有するための安全なディレクトリも備えています。この標準化されたアプローチにより、ユーザーは新しいThreadボーダ・ルータを簡単に作成したり、ボーダ・ルータを新規に作成せずに既存Threadネットワークにデバイスを追加したりできるため、統合Threadメッシュ・ネットワークの利点を実現し、ネットワークの断片化を抑制できます。HRAPロードマップではこれを基盤として、Thread 1.4で拡張される機能のサポートを含め、スマートホーム・インフラの強化を進めていきます。
拡張マルチ管理者
マルチ管理者は、選択肢を広げ相互運用性を高めるというMatterの構想の中心的機能であり、ユーザーはこれを利用してMatter機器を複数のスマートホーム・システムに接続できます。しかし、ユーザーがスマートホームを拡張している場合、住宅内の複数のエコシステムで各デバイスを個別に共有する作業は面倒で複雑になる場合があります。拡張マルチ管理者機能により、1人のユーザーの同意によって既存デバイスと新規デバイスを複数のエコシステムに接続することや、複数のエコシステムに自動参加させることが可能になるため、スマートホームの管理が容易になります。
Matter 1.4以降のリリースでは、開発者のアプリケーションに応じてこのオプション・エクスペリエンスを実装するための柔軟なアプローチが提供されます。
バッテリ駆動デバイス向けの最適化
Matter 1.4では、スイッチ、ボタン、センサなどの断続的に接続されるデバイス (ICD) のバッテリ寿命と通信機能を最適化するコア拡張が導入されています。主なアップデート内容としては、バッテリ寿命を延ばすロング・アイドル・タイム (LIT) プロトコルと、LITを必要とする低消費電力デバイスで信頼性の高い通信を確保するための新しいチェックイン・プロトコルがあります。さらに、予測可能な属性変更に関するレポートの量を減らすことで、ネットワーク・トラフィックが減少し、バッテリのパフォーマンスとネットワーク効率が向上します。
乗員検知
既存のセンサ・クラスタ機能を強化し、レーダー、ビジョン、アンビエント・センシングなどのセンシング機能がサポートされました。さらに今回のアップデートではカスタマイズ可能な感度設定が導入され、改善されたセンサ調整機能と、イベントベース更新による履歴レポート機能を利用できるようになり、精度が高く適応性の高いスマートホーム・エクスペリエンスが可能になります。このようなアップデートは新しいセンシング手法をサポートする将来の製品を支える基盤となり、人物検知や行動の分類などの機能を可能にします。
取り付け型のオン/オフ制御と明暗制御
照明や扇風機などの非スマート家電を制御する壁付けスイッチなど、有線デバイスに電力を供給する固定壁付けスマートホーム・デバイスのサポートを拡張します。従来このようなデバイスは照明機器として製品化されることが多く、ユーザ ・インターフェースや自動化の柔軟性が制限されていました
NXPによるMatterへの投資
NXPは今後もMatterへの投資を継続し、インテリジェント・コンピューティング、コネクティビティ、セキュリティの幅広いポートフォリオによって、お客様が自社製品にMatterを導入し、補完的なテクノロジを組み合わせて、高度で差別化されたエクスペリエンスを生み出せるようにお手伝いします。Matter 1.4で強化される機能は、インフラ機能の強化やエコシステム管理の改善のための消費電力管理や環境検知など、スマートホームの核となる重要分野に対応しています。NXPはこのような機能をMatter標準の範囲内で開発、製品化する活動だけでなく、この最新機能を強力かつ効率的な方法で導入し実装できる開発プラットフォームを認定する活動でも重要な役割を果たしています。NXPの業界をリードするMatter開発プラットフォームでは、このようなデバイス・タイプと機能に対する正式な認定の策定がすでに進められています。このプラットフォームは、NXPの市場をリードするインテリジェント・コンピューティング・プラットフォームに、NXPのEdgeLock IPおよびサービスのハードウェアベース・セキュリティを統合したトライラジオおよびマルチ・プロトコル・コネクティビティを組み合わせたものです。
NXPの電力インテリジェンスと電力制御への投資
デバイスレベルでの電力管理機能とレポート機能は、住宅、ビル、その他のマイクログリッドに必要な電力効率と持続可能性を達成するために不可欠な要素であり、ソーラー・パネル、風力発電機、従来型発電機、エネルギー蓄積システム (ESS) など、さまざまな分散型電力リソース (DER) を統合するために必要です。さらに、電力管理機能は電力会社の送電網と連携して、負荷のバランスを取り、建物内の電力配分に優先順位を付けます。
NXPの先進的なテクノロジは、次のような電力管理に貢献するインテリジェント・システムの開発に役立ちます。
- 運用コストを自律的に監視、最適化
- マクログリッドとの間でやり取りされるリアルタイムの電力フローを高い信頼性で調整
- オンサイト機器とオフサイト機器を安全かつ確実に接続
NXPは、世界中で必要とされているクリーンで効率的な電力インフラをサポートするエネルギー・ソリューションを提供しています。詳細については、nxp.com/energyをご覧ください。