電動化革命が進行中であり、自動車業界のすべてのセクターに変革をもたらしています。これには、オートバイからスクーターやe-bikeまで、あらゆるクラスや価格帯の二輪車が含まれます。ほとんどのオートバイやスクーターは従来の内燃機関 (ICE) で駆動されていますが、その一方で、燃料価格の高騰や経済性と使いやすさに対する消費者の嗜好も相まって、電動車 (EV) モデルの人気が高まっています。
電動二輪車は、安全で乗りやすく、スマートで環境に優しいうえ、ICE駆動のオートバイやスクーターからの乗り換えも容易です。動力の供給が便利で、かつインテリジェント・システムにも簡単に接続できるため、ライダーのセーフティと快適性が向上します。世界の発展途上国では低価格のベーシックな二輪車が日々の通勤で必要とされている一方、富裕層市場では、より高速で航続距離が長く、ライダーの冒険心を満たすハイエンドの電動オートバイやスクーターが強く望まれています。
EV関連企業は、コネクテッド・デジタル・インストルメント・クラスタなど、付加価値のあるデジタル機能の開発を積極的に進めて、電動車への切り替えをドライバーに促しています。自動車業界におけるこうした流れを受け、二輪車メーカーでは最新モデルにデジタル・クラスタを搭載しています。車速、rpm、位置、ナビゲーション、周囲温度、走行距離などの重要な情報や車両のパラメータが明確かつ鮮明にリアルタイムで表示されるため、ライダーは運転に集中することができ、ライディング・エクスペリエンスが総じて向上します。
二輪車のデジタル・クラスタの開発を容易にする最新のリファレンス・プラットフォーム
NXPは、二輪車向けフルカラー薄膜トランジスタ (TFT) ディスプレイの開発を加速するために、オートバイ、電動スクーター、通勤用e-bikeなどの量産二輪車用に設計された複合デジタル・インストルメント・クラスタおよびコネクティビティ・リファレンス・プラットフォームを開発しました。このリファレンス・プラットフォームはハンズフリー通話、スマートフォンとのワイヤレス・ペアリングによるプロジェクション、Bluetoothオーディオ/ビデオ、OTA (over-the-air) アップデート、クラウド接続、フリート管理、セキュア・カー・アクセス、車両位置特定など、高性能グラフィックスと豊富なコネクティビティのユース・ケースを実現します。
二輪車向けコネクテッド・デジタル・クラスタのリファレンス・デザイン
リファレンス・プラットフォームには、二輪モビリティのユーザー・エクスペリエンスの向上を目的としたコスト効率の高いシステムを実現するために、次のNXPコンポーネントを組み合わせています。
- 高性能なi.MX RT1170クロスオーバー・マイクロコントローラ (MCU)
- 高集積のAW611シングルチップWi-Fi® 6およびBluetooth®/Bluetooth Low Energy (BLE) 対応オーディオ・コネクティビティ・ソリューション
- Bluetooth Low Energy 5.3準拠の無線機能を備えた、セキュアな長距離KW45ワイヤレス・アクセスMCU
i.MX RT1170クロスオーバーMCUを搭載した二輪車向けダッシュボード
NXP Tech Days Detroitの開催中に行われる、NXPのコネクテッド・デジタル・インストルメント・クラスタのリファレンス・プラットフォームのライブ・デモをご覧ください。今すぐ登録。
迅速かつ容易な開発を可能にするターンキー・リファレンス・プラットフォーム
NXPのコネクテッド・デジタル・インスツルメント・クラスタのリファレンス・プラットフォームは、OEMが二輪車に必須のインストルメント・クラスタ機能を提供できるようにするだけでなく、ライダーのエクスペリエンスを向上させるさまざまなコネクティビティ・ユース・ケースをサポートします。その主な機能には、スマートフォン、デジタル・クラスタ、ヘッドフォン間の3ウェイBluetoothペアリング、ライダーと同乗者の音楽共有、駐車場で「自分のバイクを探す」ことやスマートフォン・ベースのナビゲーション、EV充電ステーションの検索などの位置特定機能が含まれます。
ハンズフリー通話とBluetoothオーディオ
Bluetoothは、ライダーの携帯電話から二輪車のデジタル・クラスタへの接続を容易にします。ペアリングすると、通話ログや連絡先情報を共有してインテリジェント・ダッシュボードに表示できるため、ハンズフリー通話が可能になります。メッセージ通知や着信も画面に表示できます。ライダーは、二輪車の停止中または駐車中にスマート・ダッシュボードをタッチ操作し、携帯電話を介して通話をルーティングすることで、通話を発信することができます。着信は、ディスプレイの画面を使用して受けることも切断することも可能です。
高度なユース・ケースでは、Bluetoothオーディオを実装することで、ライダーだけでなく同乗者も音楽のストリーミングを楽しむことができます。ダッシュボードからヘルメットへのコネクティビティは、ライダーのエクスペリエンスをさらに向上させます。また、交通渋滞時や二輪車のバッテリー充電を待っている間に、便利なオーディオ再生機能を楽しむこともできます。
二輪車でのセキュア・アクセス
NXPのKW45 MCUは、Bluetooth Low EnergyとCANを備えるほか、セキュア・エンクレーブが統合されており、二輪車のセキュアな位置追跡とアクセスのためのコネクティビティ・オプションを低コストで提供します。二輪車の設計においては、1つのKW45 MCUがインストルメント・クラスタ内のRT1170 MCUと連動し、2つ目のKW45がライダーのキーフォブに内蔵されています。二輪車のKW45 MCUは、約3メートル以内の近距離であれば、キーフォブやさらにはスマートフォンともペアリングさせることができます。その場合、ライダー側からi.MX RT1170 MCUにpingして音声を鳴らしたりライトをつけたりすることで、駐車場で自分の二輪車の位置を簡単に特定することができます。
二輪車のデジタル・クラスタのKW45 MCUが一般的な検索アプリに登録されていれば、スマートフォンを利用して地図上の二輪車の位置を追跡し、近距離にて手動で音声やライトをトリガすることもできます。より高度なユース・ケースとしては、BLEスマート・タグによる追跡機能を実装し、スマートフォンのグローバル・ネットワークを活用して、紛失または盗難された二輪車を見つけることも可能です。
リファレンス・プラットフォームで二輪車のコネクティビティ・ベースの機能を拡張
- バッテリーの消費、経路、速度、走行距離などの車両情報のリアルタイムでの受信
- 最寄りの充電ステーション、公共駐車場、その他興味のある特定の場所を表示
- 二輪車の点検スケジュールに対応するアップデートと通知の共有
- リモートでの二輪車のロック/ロック解除
- 安全上の問題や劣悪な路面状況に関する情報を交通管理機関や法執行機関と共有
- クラウドを介したフリート管理
二輪車に高度なテクノロジをもたらすi.MX RT1170 MCU
自動車市場では長年にわたってNXPのi.MXアプリケーション・プロセッサが幅広く採用されている一方で、i.MX RT1170クロスオーバーMCUは 、ローエンドの自動車や二輪車に実装されるコネクテッド・デジタル・ディスプレイやインストルメント・クラスタでの使用で支持を集めています。i.MX RT1170クロスオーバーMCUは、車両のディスプレイにおいて、マイクロプロセッサの高性能および高集積と、MCUの低コスト、使いやすさ、リアルタイム機能といった利点を兼ね備えています。
i.MX RT1170クロスオーバーMCUは、-40°C~+125°Cの温度範囲に対応する初の車載認定i.MX RT製品です。豊富な機能を備えたMCUは、電力効率に優れた2つのArm® Cortex®-M CPUコアのほか、ベクタ・グラフィックスをサポートする2D GPUやOpenVG ™ライブラリなど、クラス最高のマルチメディア機能を備えています。i.MX RT1170は、RGBディスプレイとパラレルCMOSセンサ・カメラ・インターフェースに加えて、MIPI CSIとDSIをサポートしており、開発者により多くの選択肢を提供します。i.MX RT1170は、人工知能 (AI) や機械学習 (ML) 機能に対応したさまざまなコネクティビティ・オプションを提供します。i.MX RT1170 MCUは、Quality Management (QM) クラスのデバイスとして、追加のハードウェアを使用してASIL-B対応の自動車セーフティ・ソリューションをサポートできます。
NXPとエコシステム・パートナーは、開発者がすぐに設計を開始し、完全な製品開発と大量生産に迅速に移行できるように、包括的な支援を提供します。MCUXpressoスイートのソフトウェアとツールは、NXPのi.MX製品ポートフォリオ全体にわたって一貫したエクスペリエンスを提供します。
i.MX RT1170クロスオーバーMCUブロック図 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
二輪車のオーディオ・コネクティビティを実現するAW611ソリューション
AW611オーディオ・コネクティビティ・ソリューションは、高集積の2.4/5 GHzデュアルバンド1x1 Wi-Fi® 6 (802.11ax) およびBluetooth®/Bluetooth Low Energy 5.2対応シングルチップ・ソリューションで、AEC-Q100グレード3に準拠しており、車載市場向けに最適化されています高度な統合により、システム・コストと外部部品点数を削減できるとともに、内部無線と4G LTEなどの外部無線が効率的に共存できるようになります。
AW611には、NXPの802.11ax (Wi-Fi 6) テクノロジを利用したフル機能のWi-Fiサブシステムが搭載されており、前世代を上回る高スループット、優れたネットワーク効率、低レイテンシ、広い通信範囲を実現します。また、AW611は、BluetoothとBLEをサポートする独立したBluetooth 5.2サブシステムを内蔵しています。このデバイスは、ハンズフリー・プロファイル (HFP) やオーディオ・ストリーミング用のAdvanced Audio Distribution Profile (A2DP) などのBluetoothプロファイルのほか、デュアルWide Band Speech (WBS) などの追加プロファイルを備えています。
AW611内部ブロック図 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
二輪車にコスト効率の高いBluetoothコネクティビティをもたらすKW45 MCU
このリファレンス・プラットフォームは、セキュア・カー・アクセスと車両位置特定サービスを提供するKW45 BLEワイヤレスMCUも搭載しています。KW45の3コア・アーキテクチャには、96 MHzのArm Cortex-M33アプリケーション・コア、無線専用のCortex-M3コア、分離型のEdgeLock®セキュア・エンクレーブが統合されています。また、BLE 5.3準拠の無線機能も搭載しており、最大24のセキュアな同時接続をサポートしています。
KW45アーキテクチャ ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
二輪車のコネクテッド・デジタル・クラスタの設計に着手
二輪車の開発者は、NXPが培ってきた車載インフォテイメント、TFTディスプレイ・テクノロジ、セキュア・コネクティビティに関する奥深いノウハウに加えて、NXPの車載認定プロセッサ、ワイヤレス・デバイス、オーディオ・ソリューション、開発ツールの幅広いポートフォリオを活用できます。NXPのコネクテッド・デジタル・クラスタのリファレンス・プラットフォームは、次世代の安全かつセキュアでコスト・パフォーマンスに優れた二輪車設計を支える最先端のテクノロジを提供します。リファレンス・プラットフォームの詳細については、二輪車向けコネクテッド・デジタル・クラスタをご覧ください。