機能安全は、自動車のシステムの中でも特にブレーキやステアリング、数々の先進運転支援システム (ADAS) などのセーフティ・クリティカルな機能にとって重要となる設計上の考慮事項です。世界中の規制機関は、自律走行車 (AV) およびADASのテクノロジに対して、車両のライフサイクル全体を通じたリスクと潜在的なシステム不具合の低減を求める、より厳しい安全基準を採用しています。この傾向により、半導体の設計や製造にも、開発プロセス全体を通じて機能安全原則を用いることが要求されています。
機能安全の目標と基準に準拠することで、ハイエンドのデジタル・コックピット、インストルメント・クラスタ、テレマティクスなど、自動車のヒューマン・マシン・インターフェース (HMI) の動作の安全性と信頼性も向上します。今日の統合デジタル・コックピットは、インストルメント・クラスタ、インフォテイメント、コネクティビティ、ヘッドアップ・ディスプレイ (HUD)、ドライバー監視機能などに単一のドメイン・コントローラで対応するマルチ・ディスプレイを搭載するまでに進化しています。
ドメイン・コントローラで複数の電子制御ユニット (ECU) の機能を統合することにより、CPUおよびGPUのコンピューティング能力が高まり、ドライバー・エクスペリエンスが総じて向上するとともに安全性が強化されます。この統合アプローチを通じて、システム・コストを削減し、Over-the-Air (OTA) でのソフトウェア・アップデートを簡素化すると同時に、電気自動車の設計にとってますます重要な要素となっている重量と消費電力を最小限に抑えます。
車両におけるマルチディスプレイのHMI環境は、デジタル音声アシスタント、インストルメント・クラスタ、インフォテイメント、クラウド・コネクティビティ、高度なセキュリティ、テレマティクスをサポートします。最寄りのコーヒー・ショップを探したり、目的地への最適なルートをたどったりする場合でも、ドメイン・コントローラをベースとした最新のデジタル・コックピット設計により、安全で効率的な車両の制御とナビゲーションを確保できます。また、ドメイン・コントローラは、商用車においてもクラス最高のデジタル・エクスペリエンスを実現し、例えばトレーラーやバスのような全長の長い車両のスマート電動ミラーなどの機能を拡張します。
機能安全への準拠に適したアプリケーション・プロセッサ・プラットフォームを選択する
NXPは、ドメイン・コントローラ・アプリケーションをターゲットとした、すぐに実装できるi.MX 95アプリケーション・プロセッサにより、自動車のOEMおよびTier 1サプライヤが車載HMI設計において機能安全に準拠できるよう支援します。NXPが最近発表したi.MX 95アプリケーション・プロセッサ・ファミリは、ISO 26262およびIEC 61508機能安全規格の自動車安全ガイドラインに基づいています。
具体的には、i.MX 95プロセッサは、ISO 26262:2018および決定論的能力 (SC)-3で定義されている車載安全統合レベル (ASIL)-Dのシステマティック・メトリックとASIL-Bのランダム・アーキテクチャ・メトリックに加え、IEC 61508:2010で定義されている安全統合レベル (SIL)-2のランダム・アーキテクチャ・メトリックをターゲットとしています。i.MX 95では、機能安全が要求されるユース・ケースにおける信頼性の確保と導入の容易化のために、TÜV SÜDによるISO 26262の認証を受ける予定です。同社は、構造的および電気的な製品安全性に関して最低基準を定めている、信頼された独立認証機関です。
i.MX 95ファミリは、開発者が機能安全目標を達成しやすくするために、プロセッサの他の部分とは独立して動作するように設計されたリアルタイム・セーフティ・ドメインを備えています。このセーフティ・ドメインの機能により、安全性が最重視される厳しい車載環境であっても、品質管理 (QM) アプリケーションとは別に、確実かつ予測どおりにセーフティ・クリティカルな動作を実行させることができます。セーフティ・ドメイン・アーキテクチャを統合したi.MX 95プロセッサは、安全機能が強化された高度な車載HMIプラットフォームを構築するための堅牢で信頼性の高い基盤を提供します。
ドメイン・コントローラとして機能するi.MX 95プロセッサをベースとしたデジタル・コックピットやインストルメント・クラスタは、ドライバーに異常を通知するアラートや警告を表示または再生し、セーフティ・クリティカルな機能を確保するのに役立ちます。これらの警告や車内オーディオ・アラートは、自動車のOEMが定めている信頼性と安全性に関する高い基準を満たします。
お客様第一のシステム・ツー・シリコン設計
NXPのシステム・ツー・シリコン・アプローチは、お客様がi.MXプロセッサを使用して独自の革新的な機能安全ソリューションを開発できる可能性を解き放ちます。このお客様重視のアプローチは、お客様のニーズとエンド・アプリケーションへの要求事項を深く理解することをはじめとし、半導体の設計プロセスのすべての段階にシステム・レベルの考慮事項を取り込むことに焦点を当てています。NXPは、システム・ツー・シリコン設計アプローチを取り入れることで、お客様の当面のニーズを満たすだけでなく、進化する市場の需要と最新のテクノロジに対応する拡張性と柔軟性および確かな将来性を備えた半導体ソリューションを提供します。
システム・ツー・シリコン設計は、ハードウェアとソフトウェアのコストと複雑さを低減すると同時に、i.MXの開発で用いられる「特定条件に依存しない安全要素」(SEooC) の概念における主要な機能安全特性を強化することで、i.MXプロセッサの価値を最大限に高めます。またNXPでは、この設計アプローチにより、新たに出現するシステムレベルの機能安全のユース・ケースに対処するための適切な安全関連IPセットを備えた組込みセーフティ・アイランド・アーキテクチャの開発を進めています。
i.MXでサポートされる自動車の機能安全のユース・ケース
NXPのi.MX 95プロセッサとパワー・マネージメントIC (PMIC) を組み合わせることで、SEooCの開発概念を活用した幅広い自動車安全システムに対応する汎用プラットフォームが実現します。
- デジタル・コックピット、インストルメント・クラスタ、HUD
- ドライバー監視システム (DMS)
- 車内オーディオ・アラート
- リア・カメラ
- 電動ミラー
- テレマティクスとコネクティビティ
- カスタマイズされたその他のセーフティ・ソリューション
NXPのi.MXプロセッサを用いてカスタマイズされたセーフティ・ソリューション
NXPは、お客様が車載アプリケーションにおいて機能安全の基盤を確立するのに役立つ包括的な安全ソフトウェアを提供しています。NXPのセーフティ・ソフトウェア・ライブラリを使用すると、基本となるソフトウェアの安全性がASIL-B認定セーフティ・ソフトウェア・フレームワーク (SAF)、システム・マネージャ (SysMan)、構造的コア・セルフテスト (SCST) に準拠できるようになります。またNXPでは、SafeAssureプログラムの一環として、安全なマイクロコントローラ抽象化レイヤ (MCAL) やリアルタイム・ドライバ (RTD) を含む幅広いセーフティ・アプリケーション・イネーブルメントもサービス・ベースで提供しています。
NXPのセーフティ・ソフトウェア・ライブラリは、以下の機能安全規格への適合性に関するTÜV SÜDによる認証の対象となっています。
- ISO 26262:2018 ASIL-D
- IEC 61508:2010 SIL-3
- ASIL-B/SIL-2のハードウェア・メトリックのサポート
NXP:お客様の機能安全のパートナー
NXPは、セーフティ・クリティカルな車載アプリケーション向け半導体ソリューションのリーディング・プロバイダです。車載に関するノウハウ、包括的な製品ポートフォリオ、機能安全への取り組み、および業界標準への準拠により、世界中のお客様から信頼を得ています。NXPの半導体製品およびプロセスは、ISO 26262およびIEC 61508機能安全規格に準拠しています。また、NXPは製品やソフトウェアの安全機能を向上させるための研究開発に莫大な投資を行い、新しい安全規格や規制の最前線に立ち続けています。
NXPは、お客様による車載の機能安全ソリューションの実装を支援するための包括的なサポート・プログラムやサービスを提供しています。その最たる例がNXPのSafeAssureプログラムであり、システム・レベルの機能安全要件への準拠を容易にし、お客様がISO 26262の標準化、サステナビリティ、コンプライアンスを設計に組み込むのに役立つものです。このプログラムは、お客様と、車載の安全性に関する深い知識を共有するNXPの専門家、製品開発リソース、および業界の主要パートナーとをつなげます。
また、NXPは自動車業界の主要なOEMやTier 1サプライヤ、およびコンソーシアムと連携して、最先端の機能安全ソリューションを開発および展開しています。この連携的なアプローチを通じて、NXPの車載製品およびソリューションは、自動車業界で高まるニーズを確実に満たすように調整されます。
NXPは、最新の機能安全規格に準拠することで、自動車のHMI、ADAS、電動化、シャーシ制御、パワートレイン、ボディ・エレクトロニクスなど、自動車の安全性の未来を形成するアプリケーションの発展に貢献しています。
NXPとともに機能安全に取り組む
NXPでは、ドライバー、同乗者、歩行者、環境を最適に保護するためには、車載システムのあらゆる設計の最初の段階から機能安全について考慮する必要があると考えています。
NXPのi.MX 95アプリケーション・プロセッサ・ファミリの詳細をご覧ください。
機能安全への準拠に関するNXPのプログラム、サービス、およびソリューションについて、詳細な情報をご覧ください。