スマートフォン用ワイヤレス充電機能の搭載は、新しい車を購入する際に消費者が最初に考えることではないかもしれませんが、車載インフォテイメント・システムの主要なコンポーネントとしてこの機能を求める声は高まっています。
いつでも簡単に充電器にアクセスできる利便性と、安全性の向上により、ワイヤレス充電は自動車メーカーがユーザー体験を向上させる方法の1つとして普及が進んでいます。ハイエンドのトリム・パッケージや高級ブランドだけでなく、すべての主要な自動車メーカーが100以上の車種でこの機能を提供しています。
これらの充電ユニットの大部分は、ワイヤレス・パワーの世界的な標準化団体であるWireless Power Consortium (WPC) が管理するQiワイヤレス充電規格に基づいています。Qiは、AppleやSamsungのモデルを含むほとんどの主要なスマートフォンで使用されており、車載充電の業界標準となっています。これには、業界での認知度、革新と規格の進化に向けたWPCの取り組み、幅広いサード・パーティ製Qiアクセサリなど、いくつかの理由があります。またWPCは、消費者の期待に応える充電体験に向けて、高く評価されている認証プロセスを有しています。
NXPとQi規格
NXPには、車載ワイヤレス・パワーのグローバル・リーダーとして、Qi製品向けに高性能MWCT MCUを提供してきた実績があります。その結果、NXPはワイヤレス・パワーのソート・リーダーとしての地位を確立し、規格策定の当初からWPCに協力してきました。これには、さまざまなWPCワーキング・グループへの参加や、仕様の進化を推進するための支援が含まれます。また、NXPでは、車載アプリケーションの開発に伴う設計上の課題、特に信頼性の高いパフォーマンスの管理に伴う複雑な電磁環境適合性(Electromagnetic Compatibility:EMC)の設計と統合についても理解しています。
デバイス・メーカーはカスタムのワイヤレス充電設計を必要としているため、最終設計の仕様に応じて、顧客ごとに回路図のレビューとソフトウェアの変更が行われます。NXPの幅広いMCUポートフォリオは、Qi仕様に基づく1 W~15 W、また独自のプロトコルに基づく最大50 Wの幅広い電源範囲にわたって、ワイヤレス充電に対応したデバイスを取り揃えています。デバイスだけでなく、認定されたソフトウェアとハードウェアの設計とサポートも提供しています。
特に、Qiのパフォーマンスと採用を支援する2つのNXP製品ファミリとして、MWCT2xxxSおよびMWCT2xD2Aワイヤレス充電ICがあります。2024年11月26日、MWCT2xD2A MCUを使用したNXPのMagnetic Power Profile (MPP) マルチデバイス・ワイヤレス充電トランスミッタ が、Qi2.0 MPP準拠テストおよびIOPテストに合格しました。Qi2.0は最新のWPC規格であり、MPPはワイヤレス充電トランスミッタと受電コイルの完全な整列によって効率的な電力伝送を実現するため、これはQiへの準拠における重要な節目となります。
NXPのQi2.0認定MPPマルチデバイス・ワイヤレス充電トランスミッタ
オンチップ認証:車載充電の新時代
各OEMと開発者は、ワイヤレス充電を実装するにあたり、EMC、電力出力、認証など、いくつかの非常に具体的な課題に直面しています。現在、標準的なワイヤレス充電には、充電器を制御するための専用のMCUと、充電器が実際にQi準拠であることを確認するためのセキュア・エレメントが必要です。これは、Qi 1.3のアップデートによって促進されています。このアップデートにより、ハードウェア・ベースの認証が必要となるため、偽造製品を使用することでデバイスが被るおそれのある損害からユーザーを保護できます。これはユーザーにとって素晴らしい機能ですが、設計者にとっては、部品数が増えることで設計がより複雑になります。また、2つの個別部品を加えるために部品表 (BOM) のコストも増加し、これは相手先ブランド設計製造業者(Original Design Manufacturer:ODM)が直面している主要なプレッシャーの1つです。
MWCT2xxxSおよびMWCT2xD2Aファミリの導入により、チップに認証が組み込まれることで、個別のセキュア・エレメントが不要になり、BOMが合理化されます。このアプローチでは、NXP EdgeLock 2GOサービスを活用してWPCに接続し、認証証明書を生成します。その後、お客様または認定されたサード・パーティが固有の証明書を各MCUにダウンロードしてシステムを稼動できます。開発者は、システムへの外部セキュア・エレメントの統合に費やす時間を短縮できます。MWCT2xxxSおよびMWCT2xxxAファミリは、1つのMWCT MCUで2つのデバイスを駆動するデュアル充電に対応しているため、各ODMはこの機能に2つのチップを必要とすることなく、1つのチップで対応できます。
NXPのワイヤレス・パワー・ポートフォリオは、車載、民生用、産業用のワイヤレス充電ソリューション向けに設計された各種デバイスをサポート
ワイヤレス充電の未来に向けて
また、MWCT2xxxSおよびMWCT2xD2Aファミリは、ワイヤレス充電スタンドやワイヤレス充電ケースなどに使用できる、民生機器市場向けにカスタマイズされたMCUで構成されています。これにより、ワイヤレス充電テクノロジが拡張され、自動車、ヘルスケア、IoTなどの多様な市場をサポートする幅広い充電オプションが提供されます。
他の技術標準と同様に、Qiも進化し続け、新しい仕様のリリースが必要になります。通常はそれに伴い、認証の取得や準拠の維持のために、デバイス・メーカーによる設計変更が必要になります。MWCT2xxxSおよびMWCT2xD2Aデバイスは、柔軟なソフトウェア更新やOTAでのファームウェア更新により、ワイヤレス充電設計の将来性を確保します。新しいQi規格が導入された場合でも、ソフトウェアを更新するだけで既存のチップを引き続き使用できます。これらの新しいファミリは、128 KB~4 MBの幅広いメモリ要件をカバーし、Qi充電に加えて幅広い用途に対応します。たとえば、TJAxxxxトランシーバによって実現される自動車とのCANおよびLIN通信や、NFCによるカード保護、NCx3321によって実現される充電コントローラの低消費電力ウェイクアップやデジタル・キー機能などです。
オンチップ認証の導入により、Qi認証用に個別のセキュア・エレメントを追加する必要がなくなり、ワイヤレス充電モジュールの全体的なコストが削減されるなど、OEMにとって劇的な変化がもたらされます。NXPでは、さまざまな地域にわたって深い専門知識と経験を持つ30人以上のエンジニアが、ワイヤレス充電の未来の進化に沿った革新的なMWCTシステム・ソリューションを提供することに専心しています。NXPのワイヤレス充電ポートフォリオの詳細については、ワイヤレス・パワーのページをご覧ください。