Thread Groupのメンバー会議がポルトガルのポルトで開催されたこのタイミングで、最近発表されたThread 1.4の仕様と認定プログラムについて把握しておきましょう。
Threadはセキュリティと低消費電力性に優れた堅牢なメッシュ・ネットワークで、デバイス、システム、サービスからなる多様なIoTエコシステムの持続可能性、安全性、信頼性をシームレスに高めるために開発されました。Threadでは実績のあるオープンIP標準が使用され、アグノスティックなネットワーク層としてアプリケーション層のテクノロジを支えます。スマートホーム業界では、Threadをサポートする重要なアプリケーション層プロトコルとしてMatterが採用されています。市場に投入されるMatter with Threadデバイスの数が急速に増加しており、新機種が毎週のように発売されています
Thread Groupメンバー・ミーティングでRW612のデモを行うNXPチーム:RW612はMCX W71とMCX W72を搭載したシングルチップMCU + トライラジオ・チップのボーダ・ルータ・ソリューションで、これをエンド・デバイスに接続したデモを実施した
Thread in MatterデバイスやHomeKitデバイスの普及が進み、一般家庭に導入されるようになった現在、Thread Groupでは、Thread 1.4のリリースによっていくつかの分野の機能に関わる問題を解決できることを認識しています。次の表に、Thread 1.4で強化された機能とその概要を示します。
Thread 1.4の新機能 |
利点 |
クレデンシャルの共有 |
セットアップが簡易化され、信頼性、拡張性、セキュリティ性の高いエクスペリエンスを実現できます。
- クレデンシャルの共有方法、Threadネットワークの参加/共有方法を標準化することで、Threadデバイスのシームレスなオンボーディングが可能に
- 複数のボーダ・ルータを含み、広範囲をカバーする単独のThreadメッシュ・ネットワーク上でデバイスを運用可能
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クラウド・コネクティビティ |
Thread 1.4ボーダ・ルータはインターネットへの接続方法を標準化することで、インターネット接続の信頼性を高め、デバイスのパフォーマンスを向上させます。
デバイス・メーカーはクラウド機能(天候の変化にリアルタイムで反応するサーモスタットなど)のような魅力的な新機能を追加し、サポートとアップグレードを動的に提供可能
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インフラストラクチャ経由のThread |
Threadボーダ・ルータではThreadパケットのパスとしてイーサネットまたはWi-Fiリンクを使用することで、Threadネットワークの範囲を広げ、コネクティビティを強化できます。 |
強化されたネットワーク診断 |
Threadデバイスでは、デバッグと診断を容易にするためにネットワーク構成とステータス・データを提供する手法が標準化されているため、カスタマー・サービスのコストを削減しながら、ネットワークとデバイスのパフォーマンスの安定性をさらに高めることができます。
- 製品開発者が行うデバイス・テストとネットワークのトラブルシューティングを簡易化
- インストーラは、ネットワーク監視機能とトラブルシューティング機能をツールに追加可能
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セキュリティ保護された大規模リモート・コミッション |
プロフェッショナルによる導入や商業ビルでの利用を想定した機能です。この機能によって、大規模なThreadネットワークの計画、導入、安定運用が容易になります。
- モバイル・デバイスのBluetooth LE近接通信を使用してセキュリティ証明書を交換することで、セキュリティ性の高い認証によるコミッションを実行可能
- 天井裏や壁の中など、手の届きにくい場所に設置済みのThreadデバイスをワイヤレスでオンボーディング可能
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NXPは、幅広いThread製品とトレーニング資料をご用意しています。詳細については、こちらのThreadに関するページを参照してください。
1月にThread 1.4が発表されて以来、私はThread Groupの他の代表者とともにThread 1.4に関して多くのメディア関係者に対応し、アナリストのブリーフィングをサポートしてきましたが、この機能強化の話題は非常に大きな反響がありました。先週のThread Groupメンバー・ミーティングに参加した企業も、今後数か月以内にThread 1.4を製品ポートフォリオに導入すると熱心に語っていました。
802.15.4(Thread、Zigbee)およびBluetooth LEに対応するNXPのMCX W71 MCUと、RW612トライラジオMCU(Wi-Fi、802.15.4、Bluetooth LE)は、どちらもThreadのユース・ケースとアプリケーションを想定して開発されました。この2つのワイヤレスMCUは現在Thread 1.3をサポートしていますが、年内にはThread 1.4認証への対応を開始する予定です。
ThreadやMatterなどのユースケース主導型のテクノロジが、開発者、インストーラ会社、消費者に広く受け入れられていることは、スマートホーム業界やビルIoT業界にとって喜ばしい状況と言えるでしょう。