S32K3 MCUファミリは、堅牢なセーフティ・アーキテクチャと複数のハードウェア・セーフティ・メカニズムを備え、幅広いセーフティ・ソフトウェア、ドキュメント、テクニカル・サポートが提供されています。
標準要件としてのセーフティ
機能安全は、従来はブレーキ、シャーシ、パワートレイン制御などの車両ダイナミクス・システムに重点を置いてきましたが、現在ではボディ制御モジュールやバッテリー・マネジメント・システム(Battery Management System:BMS)からゾーンおよびモータ制御用電子制御ユニット(Electronic Control Unit:ECU)まで、車載用途全体に広く適用されています。MCUは主要なセーフティおよびアプリケーション・プロセッサとして、またはセーフティ・コンパニオンICとして、その中心的な役割を担っています。この拡大する市場ニーズに対応するため、NXPは32ビットArm® Cortex®-M7ベースのS32K3 MCUファミリに、堅牢なハードウェア・セーフティ機能と、車載設計と産業用設計の両方で使用できるカスタム・セーフティ・ソフトウェアを搭載しました。
設計からのセーフティ
多くのNXP車載プロセッサと同様に、S32K3 MCUファミリは、NXPの車載BCaM7開発プロセス(TÜV SÜD認定)に従って、特定条件に依存しない安全要素(Safety Element out of Context:SEooC)として開発されており、IATF 16949(車載品質管理システム向け)やISO 26262(IEC 61508から派生した、量産車両における電気/電子システムのリスクベースの安全規格)を含むいくつかの安全規格に準拠しています。このプロセスは、ポリシー、役割と責任、手順、テンプレート、チェックリスト、ツールの各ベスト・プラクティスに基づいており、CMMI成熟度ステージを適用して全体的なパフォーマンスを向上させます。BCaM7の開発プロセスは、決定論的原因故障の回避に役立ちます。
BCAM7開発プロセスの主なインプット
ハードウェアのセーフティ
S32K3 MCUは、ASIL Dレベルまでのアプリケーションをターゲットとし、電源、クロック、リセット、中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)、相互接続、メモリ(内蔵フラッシュおよびRAMを含む)、複数のペリフェラル・ブロックにわたるセーフティ・アーキテクチャに基づいて構築されています。これらを組み合わせることで、リアルタイムのアプリケーションに対応しながら、安全かつセキュアな外部通信を容易に実現できます。複数の安全対策により、電源モニタ、クロックおよびロックステップ・コア・モニタ、内部ウォッチドッグ、メモリ・アクセス保護、メモリ上の誤り訂正符号(Error Correction Code:ECC)、オンチップ・フラッシュのアレイ整合性セルフチェック、相互接続のエンド・ツー・エンド保護、巡回冗長検査など、MCUのさまざまな機能を監視できます。これらの大部分はオンチップ・ハードウェアで実装され、システム・インテグレータの部品表(Bill of Materials :BoM)コストの削減に役立ちます。
NXPは、ISO 26262:2018のASIL DまでとIEC 61508:2010のSIL 3までの安全関連プロジェクトについて、TÜV-SUDの認証を取得しています。証明書を表示する。
S32K3 MCUは、さまざまなArm Cortex-M7 コア構成をサポートしているため、機能安全とパフォーマンス要件のバランスを取ることができます。
- 遅延ロックステップ・モード – 空間的および時間的冗長性をハードウェアで実装し、高機能のセーフティ・カバレッジを提供します。
- 分割ロック・モード – 各コアを個別にアプリケーションで使用でき、パフォーマンスが向上します。NXPは、この構成のコア故障を検出するための構造コア・セルフテスト(Structural Core Self-Test:SCST)ライブラリを提供し、中程度の診断カバレッジを確保しています。
S32K3 MCUの技術的安全コンセプトは、フォルト・ツリー解析( Fault Tree Analysis:FTA)と従属故障解析(Dependent Failure Analysis:DFA)による定性的な安全解析、および故障モード影響診断解析(Failure Modes, Effects And Diagnostic Analysis:FMEDA)を使用した定量的な安全解析によって検証されています。FMEDAはお客様の用途に応じて設定でき、これらの解析の結果は安全解析レポートで確認できます。
セーフティ・マニュアルには、MCUを安全システムに組み込む開発者を支援するために、想定される使用状況と対応する推奨事項が記載されています。お客様は、NXPのSafeAssure NDAグループへのアクセスをリクエストして、利用可能なセーフティ・ドキュメント(セーフティ・マニュアル、SEooC標準化FMEDA、解析レポート、評価/確証方策レポート、製造部品承認プロセス(Production Part Approval Process:PPAP))をダウンロードできます。また、機能安全アプリケーションに関する専門的な技術サポートを受けることもできます。
ソフトウェアのセーフティ
S32K3 MCUは、アプリケーション開発を容易にするために、商用グレードの安全準拠ソフトウェアのパッケージでサポートされています。S32セーフティ・ソフトウェア・フレームワーク(Safety Software Framework:SAF)は、単一点故障や潜在的故障の検出と対応のための包括的なライブラリ・セットを提供し、S32K3ファミリおよびその他のNXP車載プロセッサをサポートします。構造コア・セルフテスト (SCST) ライブラリがS32K3の全体的な安全コンセプトをサポートする一方で、セーフティ・ペリフェラル・ドライバ(Safety Peripheral Driver:SPD)は、独自の安全フレームワークを開発したい開発者のための出発点を提供します。最後に、NXPは、AUTOSARおよび非AUTOSARアプリケーション向けに、商用グレードの安全準拠リアルタイム・ドライバ(Real-Time Driver:RTD)ソフトウェアのパッケージを提供します。
システム・レベルのセーフティ
S32K3 MCUは、NXPのFS26xxシステムベーシス・チップ(System Basis Chip:SBC)と組み合わせて、システム・レベルのセーフティ・ソリューションを提供できます。FS26xxは、MCUに安定した入力電力を供給しながら、セルフモニタリング機能、基本MCU演算機能の外部ウォッチドッグ監視、MCUのリセット入出力の監視と制御、故障検出および制御ユニット(Fault Collection and Control Unit:FCCU)によるエラー表示出力の監視など、さまざまな機能を備えています。MCUに回復不能な故障が検出された場合、SBCはシステムを安全な状態に移行させます。
S32K3 MCUファミリは、堅牢なセーフティ・アーキテクチャと複数のハードウェア・セーフティ・メカニズムを備え、幅広いセーフティ・ソフトウェア、ドキュメント、テクニカル・サポートが提供されています。FS26xx SBCと組み合わせることで、進化する車載および産業用アプリケーションに対して包括的なセーフティ・ソリューションが得られます。
S32K3システム・セーフティ・ソリューションには、チップの主要なハードウェアとソフトウェアの安全メカニズム、および外部SBCとの入出力接続が含まれています。
機能安全の開発支援
NXPは、Mobile Knowledgeと提携してオンラインのセーフティ・アカデミーを設立し、プログラム・マネージャやハードウェア/ソフトウェア/システム・エンジニアなど幅広い職務を対象に、ISO 26262への準拠を目的として機能安全について学ぶためのモジュール式アプローチを提供しています。
セーフティ・アカデミーでは、セーフティ・アプリケーションの開発プロセスにおける各自の役割を支援するための専用のトレーニング資料を用意しています。今すぐ登録して、オンラインのNXPセーフティ・アカデミーで安全関連の技術を学びましょう!