マイクロエレクトロニクスとソフトウェア・テクノロジの急速な発展によって、運転者のエクスペリエンスが再定義されるほど、自動車インフォテイメントやセーフティ・システムの設計が根底から変わりつつあります。
この変革の中心となっているのがeコックピット(電子コックピット)です。これは、最新の自動車に搭載されている高度なシステムで、インフォテイメント、コネクティビティ、セーフティ・モニタリングの各機能が1つの統合インターフェースに統合されています。eコックピットは運転者に情報とコネクティビティを提供するすべての機能を制御し、リアルタイムのモニタリングと自律的対処によって車両の安全性を高めます。
eコックピットの中心を担うのがコックピット・ドメイン・コントローラです。複数の電子制御ユニット (ECU) が1つの統合システムに統合されており、コネクティビティ、ディスプレイ、タッチスクリーン、デジタル・インストルメント・クラスタ、インフォテイメント、運転支援機能をシームレスに管理します。
NXPのi.MX 95アプリケーション・プロセッサ・ファミリの詳細をご覧ください。この高性能システム・オン・チップ (SoC) プラットフォームは、最新のeコックピット設計に対応する、高集積ドメイン・コントローラ・ソリューションです。ヘテロジニアス・マルチコア・アーキテクチャを備えているため、ヘッド・ユニットとデジタル・クラスタ、さらにヘッドアップ・ディスプレイを非常に高効率かつ洗練された方法で制御できます。この統合システムにより、eコックピットのアーキテクチャが簡素化され、ケーブルやコネクタのコストを削減し、設計の複雑さを抑えることができます。
eコックピットの設計を後押しする、自動車業界の3つのトレンド
自動車のコックピットが高度なeコックピットへと進化する中で、従来の機械的な操作は、カスタマイズ機能、ワイヤレス通信、インターネット・アクセス、スマートフォン統合によって運転者のエクスペリエンスを高めるデジタル・ディスプレイに置き換えられつつあります。eコックピットの設計に大きな影響を与えている主なトレンドは次の3つです。
- 車両の電動化:サプライチェーン問題の解消と価格競争によって、電気自動車 (EV) の価格が低下しつつある中で、内燃エンジンから電気モータへの移行を加速するためには費用対効果の高いeコックピット設計が不可欠です。
- ソフトウェア・デファインド・ビークル (SDV):自動車はソフトウェアのアップグレードに対応するネットワークへと進化しつつあり、固定的なハードウェア設計から脱却し、無線 (OTA) テクノロジによる迅速な機能更新と機能強化がサポートされるようになります。
- 先進セーフティ・システム:最新の自動車には、車線逸脱防止やアダプティブ・クルーズ・コントロールなどの先進運転者支援システム (ADAS) に加え、ドライバー・モニタリング・システム (DMS) が搭載されています。eコックピットの設計時には最新の安全基準に準拠して、機能安全を確保する必要があります。
適切なコックピット・ドメイン・コントローラ・ソリューションの選択
低価格EV、SDVテクノロジ、先進セーフティ・システムが主流になる未来に向けて自動車業界が移行を進める中で、コストを最適化したeコックピット・ソリューションの必要性がこれまで以上に重要になっています。i.MX 95アプリケーション・プロセッサは、Arm Cortex-A55コアを最大6基搭載する統合マルチコア・アーキテクチャによって、この市場の課題を解消します。さらに、グラフィックス、マシン・ビジョン、ビデオ・アクセラレーションの機能を備え、eコックピット設計に対応するコンピューティング・パワーを優れたスケーラビリティで提供します。プロセッサの独立したセーフティ領域にArm Cortex-M7プロセッサが搭載されており、ISO 26262 ASIL-B安全規格を満たすために必要なアプリケーション向けの安全なプロセッシング・コンテキストを提供すると同時に、コンパニオンMCUの必要性をなくしています。i.MX 95プロセッサは1つの柔軟なSoCで消費電力を抑えながら高性能のリアルタイム処理を実行でき、開発者がeコックピット設計を簡素化するために欠かせないテクノロジをすべて備えた、強力でスケーラブルなプラットフォームを実現します。この統合アプローチによって、システム・コストを削減し、OTAでのソフトウェア・アップデートを簡素化すると同時に、EV設計にとってますます重要な要素となっている重量と消費電力を最小限に抑えます。
NXPのi.MX 95アプリケーション・プロセッサ
ハイパーバイザ・ソフトウェアに代わる高集積ソリューション
ハイパーバイザは、SoCの最下位レベルで実行されるソフトウェア層で、ゲスト・オペレーティング・システムをサポートします。一般的なeコックピット設計ではハイパーバイザを利用して、ヘッド・ユニット用のAndroid OSやインストルメント・クラスタ用のLinux RTOSなど、複数のオペレーティング・システムを1つのプロセッサで同時に実行しています。従来型のハイパーバイザ・ベースのシステムでは、複数のオペレーティング・システムを管理するためにこのようなソフトウェア・レイヤを追加する必要があるため、設計のコストと複雑さが増し、潜在的なパフォーマンス・ボトルネックが発生します。
これに対し、i.MX 95プロセッサのヘテロジニアス・マルチコア・アーキテクチャでは、ハイパーバイザ・テクノロジが不要です。Cortex-M7コア上でRTOSが安全に動作し、クラスタ・ディスプレイや音声チャイムなどの安全関連機能を実行できます。一方で、Cortex-A55コアはAndroidなどのリッチOSで重要性の低いタスクを実行するためにのみ使用されます。異なるコアが別々のオペレーティング・システムを直接実行できるようにすることで、パフォーマンスへの影響を避け、ハイパーバイザの実装に伴うコスト増加と複雑さを排除できます。プロセッサのCortex-M7コアでは、DMSなどの他の重要なタスクのセーフティ・モニタリングも実行できます。同時に他のコアでAndroid OSを実行できるため、安全確保に欠かせない機能を妨げることなく、インフォテイメント・システム向けに運転者が使いやすいリッチなインターフェースを提供できます。
最先端のマシン・ビジョンとグラフィックス処理
DMS、サラウンド・ビュー、交通標識認識 (TSR) などの機能が普及したことで、マシン・ビジョンはeコックピット・システムに必須の機能になりました。i.MX 95プロセッサのeIQ Neutronニューラル・プロセッシング・ユニット (NPU) は、複数のカメラ・センサまたはネットワーク接続スマート・カメラで構成される統合ビジョン処理パイプラインの一部として、マシン・ビジョンを駆動できます。組込みのNXPイメージ・シグナル・プロセッサ (ISP) は赤外線対応デバイスを含む幅広いイメージング・センサをサポートし、マシン・ビジョン・アプリケーションに対応できます。
i.MX 95プロセッサのグラフィックス処理機能とマルチメディア機能は、特に没入感の高いeコックピット・エクスペリエンスに役立ちます。Arm Mali GPUが統合されているため、eコックピットのデジタル・クラスタからマルチディスプレイ・インフォテイメント・システムまで、リッチで生き生きとした3Dグラフィックスを提供できます。
設計段階からの機能安全
機能安全については、i.MX 95プロセッサが機能安全領域によってISO 26262 ASIL-B準拠の車載設計に対応し、あらゆる安全機能を担います。このプロセッサは音声アラート、インストルメント・ライト、カメラ・ディスプレイなど、安全に不可欠な機能を幅広くサポートし、自動車OEMが定める高信頼性基準を満たしています。
将来のニーズに対応する次世代eコックピット設計
自動車業界が進化と革新を続ける中でも、i.MX 95ファミリは、eコックピット設計のコストと複雑さを軽減できる、強力な高集積プロセッシング・ソリューションとしての存在感を示しています。さらにNXPは車載向け半導体製品とソフトウェア・ソリューションのワンストップ・サプライヤとして、パワーマネジメントIC (PMIC)、チューナー、 Wi-Fi/BluetoothワイヤレスSoC、CAN/Ethernetトランシーバ、SDVプラットフォーム、さらに豊富な機能を備えた車載インフォテイメント・システムの開発を合理化するHMI設計ツールという、包括的なポートフォリオを提供しています。
NXPのi.MX 95プロセッサの合理化されたアーキテクチャによってコスト・パフォーマンスの高い実装がどのように実現され、eコックピットのエクスペリエンスが高められるのかについては、こちらをご覧ください。i.MX 95プロセッサ・ファミリおよびその他のNXPオートモーティブ製品の詳細については、NXPの営業所または販売代理店までお問い合わせください。