NXPでは、長年にわたってサステナビリティに取り組んでいます。その取り組みの中で特に重点を置いている分野の1つが、自律型スマートホームです。NXPの製品ポートフォリオは、エネルギー効率、デバイスのコネクティビティ、AIに基づく自動化など、二酸化炭素排出量の削減と地球規模での生活環境の改善に役立つ、いくつかのメガトレンドに対応しています。
家庭での省エネに関しては、電力の節約にはさまざまな方法があり、効率がわずかに向上しただけでも、建物全体、コミュニティ全体、地域全体でそれが急速に積み上がり、大きな効果を生む可能性があるという考え方を基準としています。
そのためNXPでは、複雑なシステムレベルのユース・ケースに対応する高度なアプリケーション・プロセッサから、AC/DCコンバータやUSB Type-Cポート・ソリューションなど、効率化と設計の簡素化に役立つ個々のコンポーネントに至るまで、さまざまな省電力ソリューションを提供しています。
ここでは、自律型スマートホーム・デバイスやIoT (Internet of Things) デバイスのエネルギー目標を達成できるように、NXPがどのような方法でお客様を支援しているか、いくつか例を挙げてご紹介します。
CES 2024の自律型スマートホームに関する展示をご覧になり、NXPのテクノロジがスマートホームの未来をどのように牽引しているかをお確かめください。
規制要件を確実に遵守した設計を可能に
自律型スマートホーム分野のお客様の多くは、エネルギー効率証明書やエネルギー使用に関する政府の規制が家電製品や電子機器の設計時に考慮すべき要素となっている地域で、製品を提供しています。NXPはエネルギー監視の自動化、低消費電力(アクティブ・モードまたはスリープ・モード時)、共通コネクタなどのソリューションを提供することで、お客様がこれらの要件を満たせるよう支援しています。
ENERGY STARプログラム
米国では、ENERGY STARラベリング・プログラムが、消費者がエネルギー効率の高い製品を選択するのに役立っています。ENERGY STARラベルを取得するには、米国環境保護庁 (EPA) または米国エネルギー省 (DoE) が定める厳格なエネルギー効率基準を満たさなければなりません。ENERGY STAR製品はエネルギー消費量が少ないため、消費者が電気料金を節約しやすくなり、発電所からの有害排出物が減少することで環境保護にも役立ちます。このプログラムは現在、冷蔵庫、テレビ、オフィス機器、電球、給湯器、ボイラ、その他の電化製品を対象としています。このプログラムはスマートホーム・エネルギー・マネジメント・システム (SHEMS) にも適用されます。SHEMSに該当するのは、利用パターンに応じて省エネ行動を提案し、部屋や家の利用状況に応じてスマートホーム機器を自動制御できる、スマート・サーモスタットやスマートEV充電器などの機器です。
EUエネルギー効率化指令
2012年に初めて採択され、2018年と2023年に更新された、欧州委員会発行の指令2012/27/EUは、EU加盟国に対し、2030年までにエネルギー消費量を11.7%削減するよう求めています。この指令は、電気機器のエネルギー消費をできる限り少なく抑えるべきという考え方に基づいています。ヨーロッパの人々がエネルギーをより効率的に使用し、消費される資源を減らすことは、エネルギー費用の削減、環境の保護、気候変動の緩和、生活の質の改善、EU域外に石油供給とガス供給を依存することの抑制につながり、EU経済の持続可能な成長に役立つからです。この指令は、エネルギー消費をリアルタイムで監視および最適化できるソリューションの必要性を間接的に高め、廃棄物と二酸化炭素排出量の削減につながります。
USB Type-Cポート
別のEU指令2022/2380は、無線機器に関する指令2014/53/EUを改正したもので、スマートフォンやノートパソコンなどのネットワーク接続された電子機器に対し、USB Type-Cコネクタを使用した「共通充電」ソリューションを要求しています。USB Type-C充電インターフェースを標準化することで、消費者はデバイスのブランドに関係なく、任意のUSB-C充電器でデバイスを充電でき、複数のデバイス間で充電器とケーブルを共有できるようになります。また、さまざまなデバイスに使用する雑多な充電器やケーブルが家庭にたまっていくことを避けられるため、消費者体験も向上します。新しいデバイスを購入した消費者が充電器を廃棄することも減るため、環境汚染の抑止にも役立ちます。この指令では、すべてのスマートフォンは2024年12月までに、ノートパソコンは2026年4月までにType-Cコネクタを使用しなければならないと規定されています。
USB Type-Cコネクタに対するEU指令の法的拘束力はEU圏内に限られますが、他の地域でも同様の措置が取られています。例えばインドでは、2025年3月までにすべての電子機器に対してType-Cを標準充電ポートとして使用することを求める同様の要件が課されています。同様に2023年、カリフォルニア州は、2026年までにノートパソコンやスマートフォンを含むすべての電子機器に同じUSB Type-Cケーブルで充電できるようにすることを義務付けた、米国で最初の州となりました。
画期的なユース・ケース
NXPはお客様が規制要件や政府指定のエネルギー目標を満たせるよう支援すると同時に、エネルギー効率、自律性、サステナビリティの各分野が交差する領域を活用した新しいユース・ケースに対応するための支援も行っています。
双方向充電
現在の電気自動車 (EV) のバッテリは、ほとんどが電源からバッテリに向かって一方向のみにエネルギーが供給される「単方向充電」に対応しています。双方向充電では、エネルギーが充電器からバッテリに供給されることも、バッテリから充電器に供給されることもあります。車両はエネルギーを消費する側にも供給する側にもなります。EVから電力網にエネルギーを送り返すようなことができるため、電力会社が地域の電力網を管理したり、電気料金が高い時間帯や停電が発生したときに家庭に電力を供給したりすることが容易になります。車両へのエネルギーの供給や返還のしくみを管理するには、双方向の変換プロセスをスムーズに実行するためのスマート充電テクノロジが必要です。NXPは自動車OEMやTier 1システム・サプライヤの主要パートナーとして、すでにEV充電用の幅広いソリューションを提供しており、柔軟で効率的な双方向充電ソリューションを生み出すために必要なテクノロジを保有しています。
常時オンの家電製品
電子機器は、電源オフ、スタンバイ・モード、スリープ・モードであっても電力を消費し続ける場合があり、このような「常時オン」状態が続くと大量の電力が消費されることになります。テレビなど、リモコンの信号を受信して応答できるよう待機状態になる機器がこのカテゴリに分類されます。また、電子レンジのように時計やLEDステータス・ライトなどのデジタル・ディスプレイがある機器も同様です。NXPの高効率AC/DCコンバータなど、機器のアイドル時の消費電力を最小限に抑えられるコンポーネントは、常時オンの家電製品の影響を軽減するのに役立ちます。リスニング・デバイス
「常時オン」機器のバリエーションの1つに、機器を作動させる音声コマンドに応答できるよう待機する「リスニング・デバイス」があります。スマート・スピーカやストリーミング・デバイスなどの音声コマンドに応答する機器は、リスニング・モード時に数ワットの電力を消費する場合があります。それが数百万の家庭で使用されれば、このためだけに膨大な電力が消費されることになります。このような消費電力に加え、この種の機器の多くは音声処理の大部分をクラウドや、エネルギーを大量に消費するデータ・センターで行います。エッジ・コンピューティングは、アプリケーション・プロセッサなどのコンポーネントを使用して環境の状況を検知し、コマンドを理解して、入力に基づいて動作します。そのためコストの大きいクラウドへのデータ転送が発生せず、リスニング・デバイスのエネルギー消費量の削減に役立ちます。
AC/DC変換
ほとんどの場合、電源コンセントからはAC電源が供給されますが、多くの電子機器(およびそのバッテリ)が利用するのはDC電源です。そのため、コンセントに接続される機器やコンセントから充電するバッテリでは、AC電源からDC電源への変換が不可欠です。ただし、変換が行われるたびに、少しのエネルギーが失われます。NXPのAC/DCソリューションは効率性を目的に最適化されており、省エネルギーに関する米国のDoEとEUの適合性証明書 (CoC) の該当する基準をすべて満たしているか、それ以上の性能を備えています。
特定の製品ファミリ
自動化の追加、効率の向上、廃棄物の削減など、一歩踏み込んだエネルギー対策を実現するNXPの自律型ホーム・ソリューションについては、すでにいくつかの例を紹介しました。ここからは、さらに詳しく見ていきましょう。
i.MX 8およびi.MX 9アプリケーション・プロセッサ
NXPのi.MXアプリケーション・プロセッサは、Arm® Cortex®アーキテクチャをベースにしたシングルコア、デュアルコア、クアッドコア・ ファミリを含む、パフォーマンスが拡張可能なマルチコア・プラットフォームに属しています。高度なグラフィックス、イメージング、マシン・ビジョン、オーディオ、音声、ビデオ、セーフティクリティカルなアプリケーションをサポートします。さらに、NXPの革新的なEnergy Flexアーキテクチャを使用してエネルギー消費を最適化し、二酸化炭素排出量の削減に貢献します。
自律型ホーム分野では、i.MXプロセッサはエネルギー効率の高い家電製品、セキュリティ・システム、ホームコントロール・システムの開発に役立ちます。環境を検知し、人間の行動を学習して対応する機能を備え、真の自動化を可能にします。さらに、消費電力を抑えながらもハイエンド・オーディオなどの機能による臨場感あふれる体験を実現します。Energy Flexアーキテクチャは、ヘテロジニアス・ドメイン処理ときめ細かなパワーマネジメントを組み合わせて、各アプリケーション・モードのエネルギー使用量を最小限に抑えます。アプリケーション処理、リアルタイム機能、高速I/Oなど、さまざまな処理を別々のドメインで管理し、必要なパフォーマンス・ポイントで各ドメインの電源をオン/オフできるため、エネルギー消費が最小限に維持されます。例えば、低消費電力オーディオのユース・ケースでリアルタイム・ドメインから電力を供給することで、プロセッサの他の部分がオフになっている間もオーディオを実行できます。
自律型ホーム向けとしては、i.MX 8シリーズに含まれるi.MX 8M Miniおよびi.MX 8M Nanoプロセッサが、複数のオーディオ・インターフェースと低消費電力での処理能力に対応しています。またこのシリーズには、ディスプレイ、コネクティビティ、処理能力と消費電力の比率の最適化を担うi.MX 8M Plusや、スタンバイ時の低消費電力と高速ウェイク時間を特長とし、エネルギー効率に優れた常時表示ディスプレイをサポートする超低消費電力デバイスのi.MX 8ULPプロセッサも含まれています。i.MX 8ULPプロセッサは、スマート・パネル、リモート調光器、Bluetoothスピーカなどのバッテリ駆動デバイスに最適です。NXPのi.MX 9シリーズ・アプリケーション・プロセッサは、処理、ビジョン、ディスプレイ、コネクティビティの各ニーズに対応しつつ、低消費電力動作を実現しています。i.MX 93とi.MX 8M Plusには、カメラ、ディスプレイ・インターフェース、ビデオ監視、ジェスチャ検知を含むビジョン対応のユース・ケースがあります。また、i.MX 8M Plusは、より暗い環境でもこれらをサポートできます。
PCA945xおよびPCA946x PMIC
この2つのシングルチップ・パワーマネジメントIC (PMIC) は、i.MX 8およびi.MX 9アプリケーション・プロセッサとの組み合わせに最適化されており、IoTデバイスや自律型ホーム・デバイスの効率性を最大限に高めます。PCA9450 PMICファミリは、i.MX 8M Mini、i.MX 8M Nano、i.MX 8M Plusの各アプリケーション・プロセッサ、PCA9460 PMICファミリはi.MX 8ULPプロセッサと組み合わせて使用します。またPCA9460は、システムの合計ディープ・スリープ電力を最小にする(0.2 mW未満)専用モードにも対応しています。これによりEnergy Starの認定を取得し、グリーン・ビルディングやグリーン・ホームのサステナビリティ目標を達成できます。 PCA9451Aは、i.MX 91またはi.MX 93アプリケーション・プロセッサと組み合わせて使用します 。
さまざまなi.MXアプリケーション・プロセッサとPCA94xx PMICを含む、幅広い選択肢があるため、開発者はニーズに最適な組み合わせを選択できます。例えば、自律型ホーム・アプリケーションのコストを最適化することも、IoTアプリケーションで、軽負荷または無負荷のスタンバイ・モード時にシステムに流れる電流である静止電流 (IQ) を最適化することもできます。
TEA2xxxシリーズAC/DCコンバータ
NXPの革新的なGreenChip電源ポートフォリオは、よりスマートかつコンパクトできわめてエネルギー効率に優れた電源ソリューションを実現します。TEA2xxxシリーズのAC/DCコンバータは、省エネルギー性に優れた電源、高速バッテリ充電器やアダプタ、システム・プロテクタ、安全性の高いワイヤレス充電器など、幅広い用途に対応し、ノートパソコン、ゲーム機器、テレビなどの製品に利用できます。TEA2016/2017は、力率補正 (PFC) を備えた共振電源として、ノートパソコンやゲーム機器などで利用できます。薄型テレビ向けのTEA2376は、低負荷条件を含む幅広い負荷条件/範囲条件で、省エネ基準に適合する高効率でPFCをインターリーブします。TEA2220xは、ACからDCへの変換を簡素化し、全体的な効率を向上させるアクティブ・ブリッジ・ソリューションです。
USB Type-Cポート・ソリューション
NXPは、USB Type-Cポート接続の汎用充電器への移行を支援するために、開発期間を短縮しながら効率を高められるよう最適化されたソリューションを数多く提供しています。NX20P5090は過電圧保護機能を備えた20 Vロードスイッチ(シンク)で、最大90 Vまたは100 VのIECサージ保護機能に対応します。NX5P3363は過電流保護機能(ソース)と+80 VまでのIECサージ保護機能を備えた5 Vロードスイッチ、NX20P3483は保護機能を備えた双方向シンク/ソース・コンビネーション・ロードスイッチです。NX20P0407はCCおよびSBU信号用の28 Vデータライン・プロテクタで、NX20PO477は水分検出機能と腐食保護機能を備えた28 Vデータライン・プロテクタです。
ワイヤレス・コネクティビティ
IW416は、i.MX 8ULPプロセッサ向けの推奨Wi-FiアタッチメントとしてWi-Fi 4とBluetooth 5.2システム・オン・チップ (SoC) を高度に統合した製品で、低コストのコネクティビティ・ソリューションを実現できます。IW416は従来のBluetooth機能に加えて、Low Energy (LE)、LE Long Range、LE 2 Mbps、Periodic Advertising Sync Transfer (PAST) などのBluetooth 5.2機能を備えています。
次のステップに進む
持続可能な自律型ホーム向けのNXPのソリューションには、プロセッサ、コネクティビティ、パワーマネジメントなどのコンポーネントが最適な組み合わせで搭載されており、将来のエネルギー効率に優れた設計を実現するために役立ちます。
NXPのエネルギー効率に優れた低消費電力のアプリケーション・プロセッサとシステムに最適化されたソリューションは、お客様の設計ニーズを満たし、エネルギー目標を達成するために役立ちます。NXPは、お客様がエネルギー効率認証を取得し、Energy Star、EUエネルギー指令、USB Type-C指令などの政府規制の要件を満たせるよう支援しています。NXPは双方向のエネルギー伝達を含む自律型ホーム向けのエネルギー効率化ソリューションを提供し、サステナビリティを可能にします。また、Energy Flexアーキテクチャを導入することで、i.MXプロセッサで魅力的な自立型ホーム体験を提供しながらも、消費電力を抑制できます。