11月6日のWireless Wednesdayのビデオでは、2つのBluetoothデバイス間での安全かつ正確な測距を可能にする、チャネル・サウンディングというBluetooth 6の新機能の概要を説明しました。本日のブログでは、この新しい規格と、チャネル・サウンディングによって実現されるセキュリティの強化について、少し詳しく掘り下げます。このようにBluetoothでの測距が標準化されることで、私たちとその日常生活に組み込まれたテクノロジとの関わり方に新たな次元がもたらされます。
Bluetooth 6規格では、標準化されたチャネル・サウンディング手順を可能にする2つのコンポーネントとして、レンジング・サービス(Ranging Service:RAS)とレンジング・プロファイル(Ranging Profile:RAP)が設定されています。これら2つの仕様が、Bluetooth SIG (Special Interest Group) によって正式にリリースされました。図1に示すように、これらのコンポーネントは、Bluetooth 6コア仕様によって提供される機能とアプリケーションの間でガスケットとしての役割を果たします。NXPはチャネル・サウンディングの開発に当初から関わっており、NXPのソフトウェア・エンジニアはRASとRAPの仕様の開発およびテストに貢献してきました。このことから、NXPではプレリリース版のRAS/RAPをMCUXpresso SDKに統合することができました。
図1: ワイヤレス・レンジング・ソフトウェアの図 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
RASとRAPの仕様には、セキュリティを強化するための多くの機能が含まれています。レンジング・サービスでは、測距データのような特性に関するアクセス許可には、セキュリティとして暗号化が要求されます。これにより、センシティブ・データ(機密の個人情報など)が確実に保護されます。レンジング・プロファイルでは、測距プロセスに利用できるチャネル・サウンディングのセキュリティ・レベルの機能がアプリケーションの目的のために許容可能かどうかを、レンジング・リクエスタ(Ranging Requestor:RREQ)で判定するための規定が設けられています。また、RAP仕様では、レンジング・リクエスタとレンジング・レスポンダでサポートされる最も高いセキュリティ・レベルを選択することを推奨しています。さらに、RAP設計は、攻撃に対するチャネル・サウンディング手順のレジリエンスを確保するために必要なツールを提供します。チャネル・サウンディングのコア仕様では、4つのレベルが定義されています。これらのレベルは、RFドメインにおける物理的攻撃の影響を低減し、測距位置推定の信頼性を高めるために使用することができます。開発者は、ユース・ケースと目的を踏まえてレベルを選択できます。
Bluetooth 6チャネル・サウンディングがもたらすセキュリティの強化と標準化により、多くの新しいユース・ケースが実現し、最新テクノロジの迅速な導入が促進されます。システム・レベルでは、NXPのワイヤレスSoCおよびMCUは、Bluetooth接続を保護するだけでなく、世界各国で施行または策定されている新しいセキュリティ規制にシステムを確実に適合させることを目的とした、統合セキュリティを提供します。最近発表されたMCX W72は、Bluetooth 6チャネル・サウンディングを完全にサポートするとともに、最高レベルのセキュリティを確保するNXPの統合EdgeLockセキュア・エンクレーブ(コア・プロファイル)を搭載しています。これらをBluetooth 6仕様で強化されたセキュリティと組み合わることで、開発者はセキュアな接続とセキュアなデバイスの両者を実現することが可能です。