NXPは本日、MCX A14xおよびA15xシリーズの「多目的」マイクロコントローラをリリースしました。MCX Aは、共通のArm® Cortex®-M33コア・プラットフォームを共有する大規模なMCXポートフォリオの一部です。MCXは、一般的なNXPデバイスの優れた特長と、次世代のインテリジェントなエッジ・デバイスに適した新しい革新的な機能とを組み合わせることを念頭に開発されました。
拡張性は、MCXポートフォリオの重要な柱の1つです。MCX Aシリーズは、このポートフォリオにおいて重要な役割を担い、あらゆる用途のデバイスに対応します。次のような複数の市場にわたる幅広い範囲のアプリケーションを対象としています。
- 産業用通信
- スマート・メーター
- 自動化と制御
- センサ
- 低消費電力/バッテリー駆動デバイス
MCX A14xは48 MHz、MCX A15xは96 MHzで動作します。デバイス・パッケージ・オプションには、32ピンQFN、48ピンQFN、64ピンLQFPがあります。MCX A製品は、パッケージ・タイプ間でI/Oとピンの互換性があり、移行やアップグレードが簡素化されます。また、ペリフェラルも共通であるため、ソフトウェア開発の労力を軽減できます。最大8本のピンが20 mAの大電流駆動に対応し、一部は5V耐圧です。
MCX A14/A15ファミリのブロック図 ブロック図をダウンロードすると、拡大図がご覧いただけます。
MCX Aは、1.7 Vから3.6 Vまでの範囲で動作可能なコンデンサ不要のLDO電源サブシステムを使用しています。MCX Aの電源アーキテクチャで重要となるのが、その優れた電力効率です。
- アクティブ・モードで59 µA/MHz(3V、@25°C)(内蔵フラッシュからCoremarkを実行)
- 6.5 uAのディープ・スリープ、SRAMを完全に保持し、10 µsでウェイクアップ、3V @25 °C
- 400 nA未満のディープ・パワーダウン、2.78 msでウェイクアップ
優れたI/Oを備えた多目的ペリフェラル
MCX Aなどの多目的デバイスには、必要なすべてのペリフェラルが含まれています。UART、SPI、I2C、およびいくつかのタイマ・サブシステムは、従来のアプリケーション向けの基盤として機能します。ただし、MCX Aには、独自の特徴的な追加機能もいくつか搭載されています。
MIPI I3C®:新しいI2C
NXPは、マイクロコントローラ・ファミリへのMIPI I3Cバスの実装に積極的に取り組んでいます。I3Cは、より高速な2線式アプリケーション向けにI2Cをアップグレードする目的で、MIPIアライアンスによって開発されました。I3Cは、PCB上のデバイス間の単純な2線式インタフェースとして引き続き機能しながら、SPIの代替として位置付けられています。
MIPI I3Cに対するNXPのサポートは、汎用MCUやi.MX RTクロスオーバーMCUからハイエンドのi.MXアプリケーション・プロセッサまでに及びます。
NXPのI3Cサポート
ピン数の少ないMCX Aデバイスに搭載されたI3Cペリフェラルは、I3Cプロトコル・ブリッジングや、高速2線式インターフェース搭載のインテリジェントなペリフェラルなど、さまざまな新しいアプリケーションの可能性を開きます。
フルスピードUSBデバイス・コントローラとフレキシブルなブートROM
MCX Aデバイスには、オンボードPHYを備えたフルスピードUSBデバイス・コントローラが搭載されています。USBの追加によって、MCX Aは多目的デバイスとしてさらに強化され、PCやその他のスマート・デバイスへのコネクティビティが確保されます。MCX AのUSBサブシステムの特徴的な機能の1つが、ブートROMを介したインシステム・プログラミング (ISP) です。製品はUSBインターフェースを使用してフィールド・アップデートが可能です。
MCX AのブートROMには、ISP機能が組み込まれています。ファームウェア・アップデートの失敗は、もはや過去の問題となるかもしれません。このブートROMは、フラッシュ・メモリの内容に関係なく動作することが保証されているフォールバック・プログラミング・オプションを備えています。
重要なポイントとして、ISP機能はUART、I2C、およびSPIインターフェース経由で使用できます。NXPのMCUXpresso SECツールを使用すると、ブートROMの機能を簡単に使用できます。これによりユーザーは、直感的なグラフィカル・インターフェースやスクリプト用のコマンド・ライン出力操作を使用して、量産品プログラミングやフィールド・アップデートのための独自のワークフローを開発できます。NXPのオープンソースのSecure Provisioning SDK (SPSDK) により、上級ユーザーは必要に応じてコマンド・ライン操作をさらにカスタマイズできます。
産業用センシングおよび制御のための堅牢なメモリ・サブシステム
MCX Aのメモリ・アーキテクチャには2つの注目すべき機能があります。
1つは低消費電力キャッシュ・コントローラ (LPCAC) です。LPCACは、Arm Cortex-M33コード・バスに接続された小型で高効率の4 KBキャッシュ・コントローラです。LPCACにより、データや命令を低レイテンシで利用可能です。プロセッサのパフォーマンスをシステム・メモリのパフォーマンスから切り離すことができるため、DMAなどの他のペリフェラルに対するバスの可用性が向上します。
この機能は、センシングおよび制御アプリケーションで最高のI/O性能と処理性能を達成するために不可欠なものです。キャッシュ機構が不要な場合は、4 KBのLPCACメモリを命令メモリに転用できます。この領域にクリティカルなコードや割り込みベクトルを配置することで、タイミングや制御ループの厳しい条件に対応できます。
MCX AのRAMの一部にはECC機能があり、高い信頼性を必要とするアプリケーションでエラー報告モジュール (ERM) と組み合わせて使用できます。
モータ制御とアナログ・サブシステム
MCX Aは、4 MSPSの高速ADCと、8ビットのリファレンスDACを備えた高速コンパレータを内蔵しています。このアナログ・サブシステムは、FlexPWMペリフェラルを含むモータ制御サブシステムと組み合わせることができます。
高度なアナログ・ペリフェラルやモータ制御サブシステムにコネクティビティを兼ね備えたMCX Aは、次のようなアプリケーションに最適です。
- BLDCモータ、PMSM、フィールド指向制御
- 高精度のサーボ・システムおよび位置決め
- 分散型バッテリー・マネジメント・システム (BMS)
MCUXpresso開発者エクスペリエンスによって実現される使いやすさ
私たちは、開発者がソフトウェアをどのように開発するかに関して選択の自由を提供できるよう取り組んでいます。MCX Aの中心にあるのが、MCUXpresso開発者エクスペリエンスです。MCUXpressoスイートのソフトウェアとツールには、コアとなるソフトウェア開発キット (SDK) に加え、統合開発環境 (IDE) および設定ツールが含まれています。
MCX AのSDKには、低レベルのペリフェラル・ドライバ、設定用ユーティリティ、およびUSBデバイス・スタックなどのミドルウェアが含まれています。
これらのSDKは柔軟性が高く、さまざまなIDEとともに使用できます。
MCX Aはベアメタル・アプリケーションに適していますが、RTOSにも対応しています。MCX AのSDKにはFreeRTOSのサンプルが含まれています。Zephyr RTOS に対するファーストクラスのサポートは2024年後半にリリースされる予定です。
SDKに用意されているFreeRTOSサンプル
MCX AのUSBミドルウェア・サポート
USBへの対応はときに複雑になる場合がありますが、NXPではあらゆる一般的なユース・ケースについてサンプルを提供しています。MCUXpresso IDEには、カスタムUSBデバイス・コードを生成するための洗練された設定ツールも含まれています。このツールを使用すると、開発者はすべてのボイラープレート初期化コードと記述子を管理しながら、USBデバイスを迅速に構築できます。
MCX AのMCUXpresso SDK
最新のSDKパッケージを入手する方法の1つは、オンラインのMCUXpresso SDK Builderを使用することです。
MCXのMCUXpresso SDK Builder
SDKは、MCUXpresso IDE内から直接、またはMCUXpresso for VS Codeからも取得できます。特定のデバイス用のスタンドアロンSDKを生成するだけでなく、開発者はNXPのGitHub リポジトリからリリースを直接取得できます。
MCUXpresso SDKはオープン・ソース
NXPは、好みのワークフローの使用をサポートすることで開発者に自由を提供します。
最新のCI/CD開発ワークフローのサポート
ますます多くの組込みプロジェクトが、継続的な統合と継続的な展開ワークフローに依存しています。マイクロコントローラ開発ではIDEベースのプロジェクトが一般的ですが、MCX AのツールはCI/CDパイプラインですぐに使えるコマンド・ライン・ビルドもサポートしています。SDKにはCMakeスクリプトが含まれ、Makeなどの好みのビルド・ツールや高速なNinjaビルド・システムで使用できます。
MCX AはSDKでCI/CDとコマンド・ライン・ビルドをサポート
SDKには、トップレベルのCMakeLists.txtスクリプトと、ビルドの開始方法を示すシェル・スクリプトが用意されています。重要なポイントとして、VS Codeプラグインはこのフレームワークを背後で使用しながら、高速なninjaビルド・システムでコードをコンパイルします。ユーザーはソフトウェア開発への取り組み方法に関して、さまざまなIDE、オープン・ソースのGitHub配布オプション、プロフェッショナルなCI/CDワークフローのフレームワークなど、さまざまな選択肢を得ることができます。
FRDM-MCXA153開発ボードによる迅速なプロトタイプ作成
MCX Aシリーズのリリースに伴い、FRDM開発プラットフォームも強化されて再登場しています。
FRDM-MCXA153開発ボード
FRDMプラットフォームは長年にわたり開発者の間で人気がありました。Arduino®互換のピン・ヘッダーを介してI/Oに簡単にアクセスできます。MCX Aのペリフェラルに完全にアクセスできるように、追加のピン列が用意されています。また、mikroBUS とDigilent PMOD™ 用のソケットも含まれています。拡張ボード・ハブ (EBH) には、互換性のある拡張ボードと「シールド」が用意されています。
NXPの拡張ボード・ハブ
開発プロセスに役立つボードやソフトウェア・サンプルを見つけることができます。
ニーズに合った拡張ボードが見つからない場合は、独自のボードの構築をお手伝いします。NXPのMCXコミュニティ で、MCX A FRDMシールド・テンプレートが提供されています。エンジニアはこのテンプレートを使用して、カスタム・ユース・ケースをサポートする独自のシールドをすばやく構築できます。
MCX A FRDMシールド・テンプレート
SDKや拡張ボード・ハブとともに使用できるもう1つの開発リソースが、アプリケーション・コード・ハブ (ACH) です。ACHリポジトリには、高レベルのソフトウェア・サンプル、コード・スニペット、デモが含まれています。これらのサンプルはSDKと組み合わされており、NXPのIDEから直接、またはACH Webインターフェースを介してアクセスできます。
2024年を通してのMCXの拡張性
MCX Aは、MIPI I3Cなどの独自のペリフェラルを活用してモータ制御、センシング、および関連する産業用アプリケーションに対応する、MCXポートフォリオの重要な部分です。MCX A14xとA15xは、ほんの始まりにすぎません。MCX Aシリーズは、2024年以降も引き続き拡張され、パッケージのピン互換性を保持しながら、より多くのフラッシュやRAMを搭載した新しいファミリやバリエーションが加わる予定です。
MCX A14xおよびA15xのページから、データシートやリファレンス・マニュアルなど、始めるために必要なあらゆるものにアクセスできます。