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今日のEV市場は成長を続けており、EVのパフォーマンス向上への要求が高まっています。これは設計者とOEMにとって、市場投入の迅速化を図りながら、効率とエンドユーザー・エクスペリエンスを向上させる必要があることを意味します。この際に最も大きな課題となるのは、EVのトラクション・インバーターを含む幅広いアプリケーションの開発に適したソリューションを見つけることです。S32Kファミリに新たに加わったNXP S32K39 MCUシリーズが、さらなるニーズに応えるためにまもなく発売されます。
EVのパフォーマンスを最大限に高めるには、バッテリー・マネジメント、効率的なモータ駆動、急速充電、グリッド全体のロード・バランシングなど、さまざまな点を考慮する必要があります。NXPの広範な電動化ソリューションはエコシステム全体にわたって効率的な制御を提供しており、まもなく発売されるS32K39もこれを継承しています。
S32K39 MCUシリーズは、EVのトラクション・インバーターの制御に対する要求を満たすために設計された専用デバイスです。優れた性能、広範な統合、信頼性の高いネットワーキング、高度なセキュリティ、機能安全への対応など、数々の優れた特長を備えています。トラクション・インバーターは、EVの機能やEVバッテリの性能、また最終的にはドライバー・エクスペリエンスにおいて重要な役割を果たすため、これらの特長を有することは不可欠です。
また、このMCUは汎用性が高く、トラクション・インバーター制御以外にもバッテリー・マネジメント (BMS)、オンボード・チャージャ(OBC)、DC/DC変換など、幅広いEVアプリケーションに最適です。セキュリティと機能安全への対応は従来の車載用MCUを上回り、またハードウェア分離、TSN (Time-Sensitive Networking)、高度な暗号化をサポートしているため、自動車のゾーンE/Eアーキテクチャやソフトウェア・デファインド・ビークルにも適しています。
S32K39 MCUは高性能なS32Kファミリの一部です。S32K39 MCUは、その主要な機能により、2つのトラクション・インバーターに対応するように設計されています。ロックステップ・ペアで搭載された4つの320 MHz Arm® Cortex®-M7コア、2つのスプリットロック・コア、2つのモータ制御コプロセッサ、およびデジタル・シグナル・プロセッサ (DSP) によって最適化されています。また、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ (IGBT) およびシリコン・カーバイド (SiC)、窒化ガリウム (GaN) パワー・スイッチとともに動作する2つの200 kHz制御ループをサポートし、エネルギー効率を向上させながら、より高いスイッチング周波数に対応できます。これにより、モータの小型化、軽量化、低コスト化が実現し、航続距離が延長されます。加えて、最大6 MBの内蔵オンチップ・フラッシュ・メモリと最大800 KBのSRAMを備えています。また、ISO/SAE 21434サイバーセキュリティおよびISO 26262機能安全プロセスに準拠して開発されています。
NXPは、設計者がシステムレベルの機能安全の設計を実現し、規格に適合できるよう支援することに注力しています。NXPがどのように機能安全アプリケーションの開発を支援しているかをご覧ください。
S32K39の統合ハードウェア・セキュリティ・エンジン (HSE) は、信頼性の高いブート、セキュリティ・サービス、および公開鍵インフラストラクチャ (PKI) と鍵管理を使用したセキュアなOTA (Over-the-Air) アップデートを容易にします。また、2つのモータ制御コプロセッサとNanoEdge™高分解能PWM(パルス幅変調)を搭載し、より優れた性能と高精度な制御を実現します。レゾルバ励起のために、SAR、シグマ・デルタA/Dコンバータ、コンパレータ、正弦波生成器によるマルチチャネル・アナログ・サポートを備えています。S32K39のアナログ統合とセキュアなソフトウェア・レゾルバのサポートにより、ディスクリート・コンポーネントやレゾルバ/デジタル・コンバータなどの外部コンポーネントが不要になるため、コストの削減につながります。
EVトラクション・インバーター・アプリケーションの開発を有利に始めましょう。S32K39の主な特長をご覧ください。
S32K39 MCUは、従来の絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ (IGBT) だけでなく、より新しいシリコン・カーバイド (SiC) および窒化ガリウム (GaN) 技術にも対応しています。また、独立して動作し、最大2つのドライブ・コンバータに対応できます。さらには、TSNを介してリモート・インテリジェント・アクチュエータとしても機能し、3つまたは4つのモータを駆動可能です。NXPのS32Eリアルタイム・プロセッサと組み合わせることで、 電気自動車の推進ドメインのコントロール・センターとして機能し、2つの追加の推進インバーターを制御することができます。この性能は特に、最大4つの電動モータに対応することで車両の性能と操作の向上を図ろうとしている自動車メーカーにとって、大きな利点となります。
S32K39 MCUは、NXP FS26セーフティ・システム・ベース・チップ (SBC) およびNXP GD3162高電圧絶縁ゲート・ドライバと組み合わせて使用することで、ASIL Dアプリケーション向けのデュアル・トラクション・コンバータ・ソリューションとして機能します。FS26 SBCはシステムに電源を供給し、絶縁されたセキュリティ・モニタリングを確保します。一方で、GD3162ゲート・ドライバは、駆動条件に適応するための調整可能な動的ゲート強度と、スイッチング損失を低減し効率を高めるためのPWMデッドタイム強制を備えています。さらに、応答性に優れたエラー防止メカニズムも備えています。
これらの製品に関心をお持ちのお客様は、エンジニアリング・サンプル、評価ボード、および包括的なソフトウェア・サポートやツールにアクセスできます。これらは、S32K39 MCUで動作するように設計されていますが、さらにNXP FS26 SBCおよび高度な高電圧絶縁ゲート・ドライバGD3162と組み合わせて、安全なインバーター制御システム向けの調整可能な動的ゲート強度制御も実装できます。これらはともに、トラクション・インバーターの開発における最も高レベルの機能安全 (ASIL D) に対応します。この製品は2024年初頭の量産開始を予定しています。
S32K39 MCUシリーズと供給状況については、最寄りの販売代理店までお問い合わせください。
電動化およびゾーンEEアーキテクチャ市場を対象としたNXP車載リアルタイム・コントローラの製品マネージャを務めています。それ以前の7年間は、NXPのイーサネット・スイッチ・ポートフォリオの製品マネージャを務めていました。ST Microelectronicsとコロンビア大学との共同研究によりボローニャ大学で情報工学の博士号を取得しています。
NXPの車載ビジョンおよび自動ドライブ・プロセッサ・ソリューションの製品マネージャを務めています。過去8年間、前方カメラ、サラウンド・ビュー、センサとデータのフュージョンなどのアプリケーションをサポートし、ADAS向けプロセッサ・ソリューションの開発に携わってきました。パートナー、自動車のTier 1メーカー、自動車メーカーと緊密に連携してトレンドを把握し、高度に自動化された車載テクノロジの導入を促進するプロセッサ・ソリューションを生み出しています。
エレクトロニクスおよび半導体事業における製品エンジニアリング、製品マネジメント、製品マーケティングでさまざまなポジションに携わってきました。10年近くにわたり、NXPの機能安全システムベーシス・チップの開発部門で製品ライン・マネージャを務めています。車載市場における経験は、ドライブ・トレインの電動化から、パワーマネジメントと機能安全のテクノロジを中心とした自動運転市場にまで及びます。物理工学、半導体物理学、および経営管理の修士号を取得しています。
高電圧ゲート・ドライバの製品マーケティング・マネージャとしてNXPに入社しました。過去15年間のキャリアでは、ON SemiconductorおよびMicrochip Technologyにて6,000万ドルを超える半導体製品ポートフォリオの事業開発と製品ライン・マネジメントも担当していました。16の製品ファミリのコンセプトから収益に至るまでの推進を担当してきました。サンノゼ州立大学で電気工学の修士号を取得しています。
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